書籍・雑誌

愛読書!『楽園/鈴木光司』

Rakuen

『リング』、『らせん』等、ホラー小説で有名になった鈴木光司のデビュー作。

日本ファンタジー大賞の優秀賞受賞作品。

この度、角川文庫に収録されるというので、読んでみることにしました。

太古のゴビ砂漠。部族の若者ボグドは、美しき少女ファヤウを自らの力で迎え入れ、夫婦となるが、他民族の襲撃により引き裂かれてしまう。ボグドは、遥かかなたに連れ去られた妻の姿を求め、一人旅立つ。
そして、舞台を18世紀の南太平洋、現代のアメリカの地底湖へと移しながら、時空を超えた愛の邂逅と、戦うことにより手に入れることが出来る『楽園』の意味を描いていく。

アメリカ原住民である、いわゆるインディアンと我々モンゴロイドは同じ人種であると言われている。

まだ、ユーラシア大陸とアメリカ大陸が地続きだった氷河期に、ベーリング海峡を越えたモンゴロイドがいた。

別れた妻を取り戻すため、南周りで大陸を目指した男がいた。

巡り巡って、彼らの子孫たちが、ある種の懐かしさを抱きながら、近付いていく。

昔、果たすことのできなかった約束を取り戻すため・・・。

全く異なる3つの話が、登場人物たちさえ知らない何かに突き動かされ、繋がっていく。

こんな出来すぎた話はないと言われそうだが、だからこそのファンタジーである。

特に地底湖の話は、ジャンルや描き方は違っていても、ここから『リング』シリーズに繋がっていくんだなぁ、という「何か」があるように感じました。

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愛読書!『怪盗探偵山猫/神永学』

Yamaneko

『心霊探偵八雲』シリーズの神永学氏の幻のサスペンスが文庫化。

現代のねずみ小僧か、はたまた世紀の大泥棒か?
痕跡を残さず金を盗み、ついでに窃盗に入った先の悪事を暴く謎の人物【山猫】。
出版社社長が殺された。現場には【山猫】が窃盗に入ったというしるしがあった。
しかし、世間をにぎわすこの怪盗の信条は「人を殺めないこと」のはず。
被害者の元部下だったライターの勝村は事件を追い始める。

肩肘張らずに、スルッと読めました。

自分を記者として育ててくれた元上司の死の真相を探りたいライターと、無実の罪を着せられた怪盗が手を組んで事件を解決する。

警察の動きが妙に早くて、ろくな捜査もせずに、山猫の犯行ということになってしまう。

この辺りは、『笑う警察官』が話題になった後だけに、警察が事件の裏に絡んでいるんだろうなぁ、というのは推測できてしまうのだけど・・・。

勝村の大学時代の先輩で刑事のさくらとの淡い恋も、良い雰囲気を出している。

文庫発売を機に、続編の準備に取り掛かることになったのだとか。

【山猫】でつなぐのか。

勝村とさくらのコンビでつなぐのか。

それとも、新しいストーリーを勝村に追わせるか・・・?

期待してしまいます。

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愛読書!『どうせ今夜も波の上/椎名誠』

Naminoue

椎名さんの『赤マント』シリーズも久し振りです。

旅やグルメ(酒)、草野球やあれこれを、綴った連載エッセイ。

60歳を迎えても、矢継ぎ早の超過密スケジュールというのが笑えます。

ポルトガル旅行のネタが出てくるので、『ひとりガサゴソ飲む夜は』と執筆時期は被るのですね。

でも、同じネタを薄めて書いているということではなく、ご本人も書いているのですが、取材で見聞きしたことはそちらを読んでもらって、こちらではその前後(主に夜?)に起きた笑える話や、身の上に降りかかった憤りが綴られています。

しかし、絶え間なく動いているよな。

国内は毎日あっちこっちに移動して、海外も・・・。

続けて行った方が楽なんじゃない?と思っても、他の仕事が入っていて、一端、東京に帰ってこなくちゃいけなかったりして・・・。

このシリーズは現在も継続中なので、何処まで続くのかなぁ。

沢野ひとしさんのイラスト&あとがきも、何気にいつも楽しみにしています。

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愛読書!『春を嫌いになった理由/誉田哲也』

Haru_kirai

誉田哲也=警察小説のイメージもあるけど、そうでない作品も多いです。

これはTV番組制作を題材にした、ホラー&ミステリーですかね?

秋川瑞希は外国語が堪能であるが、今は定職についていないフリーター生活者。テレビプロデューサーである叔母から、特番のために来日する霊能力者・エステラの通訳兼世話役を押しつけられる。
嫌々ながら参加したロケ現場。エステラの透視通り、廃ビルから男性のミイラ化した死体が発見された!ヤラセなのか、それとも本当に・・・?
更には、生放送の本番中のスタジオに殺人犯がやって来るとの予言が・・・!?

400ページ近くて、結構厚いのだけど、一気に読めちゃえました。

本当に、読み始めたら止まらない感覚。

瑞希たちの取材の状況と、中国から密航してきた兄妹の日常が交互に描かれていきます。

どこかで交わるのだろうなぁ、と考えちゃうと、割と早くに物語の展開が読めてしまいます。

ただ1点を除いては・・・。

まぁ、でもその1点も、エステラが瑞希に終始ねぎらいの言葉をかけたり、番組制作を監視している(?)警察官の描写から、もしかして・・・と思ったらそうでした。

上手く作ってあります。

この作品は初期作品の文庫化で、以後ホラー系は書いていないのだとか。

瑞希と叔母、制作会社のスタッフのキャラクターも面白いし、

半年毎の特番時期でエステラ(や別の霊能力者)が来日する、

という設定で続編とかいけるのではないでしょうか。

楽しみに待っていたい。

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愛読書!『あなたがここにいて欲しい/中村航』

Anatagakokoni

中村航さんの本って、あまり読んだことないな、と手に取ってみました。

中編が3つ収録されています。

吉田くんは目立たず控えめな理系の大学生。小学校時代の図書室での幸福感、小田原城のゾウ、親友でヤンキーだった又野君、そして同じ研究室で密かに恋心を寄せる舞子さん。
高校卒業後に音信不通だった又野君と再会し、二人に去来する想いとは。
そして舞子さんとの恋の行方は。

すごく可愛らしい恋物語でした。

すごく青春していて、羨ましいと思いました。

出身が小田原ってところが良いですね。

帰ろうと思えばいつでも帰れるけど、なかなか帰ることもない。

東京出身の僕にはそういう故郷がないので、羨ましい。

舞子さんとも一歩一歩、進んでいくのが良いですね。

2編目の『男子五編』も、小・中・高・大と各学生時代を切り取って、あるな、と思いました。

そして、ラストは名作『ハミングライフ』。

こんなところで再会できるとは!

ゴーイング・アンダー・グラウンドの歌が好きで、井上良雄君が主演した映画がすごく好き。

藍ちゃんと小川君の出会いや文通が微笑ましい。

映画では小川君は保父さんだったけど、小説では夜勤のコンビニ店員。

微妙な違いはあっても世界観は一緒でした。

大袈裟なものは何もないけど、胸があったかくなる、等身大の物語でした。

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愛読書!『Helpless/青山真治』

Helpless

カバーの浅野君のイラストに思わず手が伸びました。

映画監督である青山真治氏の自作の小説版。

映画のノベライズではなく、しっかり小説として存在しています。

1989年、北九州。高校生の健次は、仮出所してきた幼なじみのヤクザ・安男と再会する。かつての仲間に組長が死に、組は解散したと告げられるが、それを信用せず、その仲間を殺して、バックと妹のユリを健次に預け、生きていると信じている組長を探すために姿を消す。
一方、健次はユリを連れてある場所を目指すが。

『Helpless』の部分は、非常に読みづらかった。

というのは、途中から健次の幼なじみで苛められっ子だった秋彦が風呂に入りながら、回想していく形で語られていくのだけど、昼間に見た事件と風呂場での出来事が同じ次元で書かれているので、分かりづらいのでした。

2編目の『わがとうそう』は、上京して大学4年になった秋彦が出版社の倉庫係のアルバイトでの日々が描かれていきます。

配送業務もあるけれど、もっぱら倉庫をホテル代わりに使う正社員カップル達の見張り役。

上司の引越しを手伝いにいって、奥さんと密会するようになったり、労働組合結成のゴタゴタに巻き込まれたり・・・。

この部分は青春していて面白かった。

ラストの『軒下のならず者みたいに』は、健次をモデルにした小説でデビューした秋彦のその後が描かれる。

最初の『Helpless』が、少し角度を変えて描かれていて、芥川っぽいというか、なかなかユニークでした。

元々、映画『Helpless』は、別の映画『ユリイカ』を経て、映画『サッド・ヴァケーション』につながっていく。

この『軒下』では、『サッド・ヴァケーション』のエピソードとその後が、やはり秋彦らによって語られていくのが、不思議で新しい感覚でした。

秋彦という男はなかなか難解な男なので、時間を置いて読んだら、また違う感じ方が出来るのかもしれません。

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愛読書!『イノセント・ゲリラの祝祭/海堂尊』

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迷コンビの田口・白鳥シリーズの第4弾。

今回は日本の権力の中心地・霞ヶ関に乗り込んでの大暴れです。

東城大学医学部付属病院。万年講師の田口公平は、いつものように高階病院長に呼び出され、無理難題を押し付けられようとしていた。
今回は、厚生労働省で行われる医療事故調査委員会への出席を依頼された。依頼元は厚労省の火喰い鳥・白鳥圭輔。
そこで田口の目にしたのは、崩壊の一途を辿る医療行政そのものだった。
そして、もう一人。官僚に闘いを挑もうとする一人の男の姿があった。

一応、宝島社の『このミステリーがすごい!』シリーズとしての出版ですが・・・。

ここまで来るとミステリー的な要素は皆無ですね!

ある意味でスゴイ!

現役の医師でもある作者の医療、特に死因究明という人間の未来にとっては必要な(はずなのに蔑ろにされている)ものに対する、意見がズバッと出ていて、普通の医療小説と言っても良いのではないでしょうか。

田口、速水、島津の同級生トリオの後輩の彦根がある意味では主人公。

先輩である田口を良い様に後ろで操作しながら、舞台を有利な方向に誘導し、満を持して登場するのであった。

今回のグッチー、何だかカワイソウ・・・。

エピソードの1つとして語られるのは、「県境に捨てられた変死体は、たった数十メートル違うところで発見されただけで検死の対象となるか、ならないか」という事実。

だからと言って、死体を運んでから救急車を呼ぶ白鳥はどうかと思うけど・・・。

クロニカルの1つとして、様々な作品のエピソードがリンクします。

セリフとして登場する、ピンク衣の氷姫が潜入捜査している北の産院の話も、既に小説化されて単行本としては発売されています。

姫の活躍も楽しみですね。

次々に刊行される関連作品が楽しみで仕方ありません。

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愛読書!『ひとりガソゴソ飲む夜は・・・/椎名誠』

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椎名さんの本、読んだの久し振りです。

旅好き、本好き、映画好き。

おかけにお酒が大好きという椎名さんとは、趣味がかぶるので、学生時代から様々な本を読ませてもらっていました。

この連載をまとめたエッセイは、とにかく酒、酒、酒のオンパレードである。

ビール党だけど、プリン体が気になり始めたて、焼酎に流れたり。

旅先で出逢った美味しい酒の肴と酒の組み合わせだったり。

ゲテモノツマミや二日酔いの話など、普通の感性のまま書かれているので、非常に親近感があって、連載なので「前にも書いたかもしれないけど・・・」と、似たような話のリフレインなのだけど、とにかく面白かったです。

最近は旅行も、宴会もめっきり減ってしまったので、久し振りに何処かに行きたくなってしまいました。

沖縄の島か、南欧とかが良いなぁ・・・。

あやしい探検隊のドレイ君の解説まで、楽しんで読めました。

古いエッセイとかも引っ張り出して読んでみようかな。

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愛読書!『ブレイクスルー・トライアル/伊園旬』

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ベストセラー作家の浅倉卓弥や海堂尊を輩出した、『このミステリーがすごい!』大賞(略して『このミス』)受賞作品。

技術の粋をつくしたIT研究所に侵入し、12時間以内にミッションを遂行し、脱出できれば1億円が手に入る一大イベントが開催されることになった。
あるIT企業が開発したセキュリティシステムの品質の高さを証明し、仮に打ち破られれば、システム的に未検知の弱点であったと修正し、より強固なものと昇華させることが目的。
主催企業の総務部に務める門脇は、会社を辞め、大学時代の親友・丹羽とこの難攻不落のIT要塞に挑むことに。
研究所に紛れ込んでしまった盗んだダイヤモンドを取り戻すために参加する窃盗団、ライバル企業の社員、そして、研究所の頑固な管理人のとことに里帰りした娘とその婚約者も入り乱れての大騒動になっていく。

なかなか面白かったです。

生態認証システムや警備ロボットなど、SF映画の世界だったけど、現実に一部導入されていたり、すぐそこまで来ていますからね。

でも、旧式のセキュリティの方が勝っていたりもする。

1章は旧友が再会し、イベントに参加するまでの経緯、2章がライバルとなるグループ、人物の背景、そして、3章ではイベントの模様を『羅生門』のように同じシーンを角度を変えながら、それぞれのキャラクターの視点で描かれている。

正直、多少、違和感はあったのだけど、それを超越した勢いがあって、軽快に読み進めることが出来たのでした。

育ちの良さそうな丹羽は主催する企業グループの会長が愛人に産ませた子供であり、門脇はライバル企業に送り込まれた産業スパイという設定で、二人はお互いに自分の真実の姿を隠して生きてきた。

真実を告白した時、二人の関係に変化が・・・。

という展開もなかなか興味深いものがありました。

続編が期待できる終わり方になっているので、今後の彼らの活躍も楽しみですね。

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愛読書!『ブラックペアン1988/海堂尊』

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『チーム・バチスタ』シリーズの海堂尊氏が描く桜宮市クロニカル。

今回はそのビギニングとも言える作品です。

バブル絶頂の1988年。佐伯教授が君臨する東城大学総合外科学教室に、アメリカ帰りの帝華大の異端児・高階講師が、新兵器を手土産に送り込まれてきた。
「スナイプAZ1988」を使えば、困難な食道癌の手術が簡単に行えるようになる、と言う。数ヵ月後、スナイプによるオペは、目覚しい戦績をあげ、佐伯教授は無謀にも若手外科医のみでオペを命じ、高階講師の切った啖呵の是非を問う。
腕は立つが曲者の外科医・渡海の不敵な笑みに、口が達者な俊足サイドバックの一年坊の世良が走り回る。

ミステリーっぽくないけど、もしかすると『チーム・バチスタ』よりも好きかも。

田口先生を不幸に突き落とす高階院長が、講師として赴任したはねっ返り者で、名院長の佐伯から邪険に扱われている。

不定愁訴外来の藤原看護士は現役バリバリの看護士長だし、花房主任は新人の機械出しとして登場する。

藤原看護士の猫田士長の評価はこの時のことなのか、と可笑しくなる。

さらには、田口、速水、島津の同期3人が、学生として外科研修にやって来て、それぞれの未来を暗示しているのも、面白かったです。

黄金地球儀とか、碧翠院とか、他の作品のネタもゴロゴロしている。

それでいて、高階講師をあしらいながら、心の底では何を考えているか分からない佐伯教授や、佐伯教授と因縁のありそうな渡海医師との確執に興味がそそられる。

今はまだどっちなのか分からない世良の真っ直ぐな性格も魅力的。

単なるビギニング物ではなくても良いのになぁ、と思っていたら、続編もあるのだとか。

新人外科医の世良の成長も楽しみですね。

文庫版『イノセント・ゲリラの祝祭』も刊行されましたが、今後はどの年代の、どんな話が飛び出すか、順不同で楽しめる訳ですね。

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