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愛読書!『真幸くあらば/小嵐九八郎』

Masakikuaraba_01

年末年始に年越しで読んでいました。

死刑囚の青年と獄中養母となった女性の書簡によって交わされる純愛を通して、生と死、死刑執行の是非といった問題が定義されていきます。

遊ぶ金欲しさに空き巣に入り、衝動的に居合わせたカップルを殺し、死刑囚となった南木野淳。
クリスチャンの榊原茜が弁護士の勧めでボランティアとして拘置所の淳を訪ね、身寄りのない淳の養母となり身の回りの世話をすることになる。
やがて、茜の正体が淳に殺された男の婚約者であり、恋人を殺されただけでなく、他の女性と関係を持っていたという事実を突きつけられ、精神を病んでいたことが分かる。
しかし、淳の書いたボールペン画の個展を開くことに奔走する等する内に、交わるはずのなかった2人は、奇蹟の恋に落ちていく。
差し入れの聖書の行間に書き込まれた秘密通信だけが真実を語る、死刑執行までの愛の軌跡。

厚さ同様に重厚な読み応えのある作品でした。

物語は、淳の残した日記や茜との書簡を遺稿集として編纂する教誨師である牧師の回想を挟みながら、二人の文章により展開します。

幼い頃に親に捨てられ、まともな教育も受けられず、牢獄の中で読み書きを覚えた20歳そこそこの青年。

控訴を取り上げて死刑を受け入れたり、獄中で自殺未遂を図ったりと、何処か生に対して投げやりな淳。

それが、茜と出会い、次第に愛するようになり、初めて生きたいと思うようになっていく。

登場人物の多くがクリスチャンであり、キリストの死生観が反映されています。

淳も最終的には改宗することはなかたのだけど、聖書を読んでいくうちに、死を待つ者として独自の視点で造詣深くなっていきます。

学生運動崩れの弁護士。淳の絵に魅せられ、常に励まし続ける年下の教務官。先輩の死刑囚たち。画廊の女。少ない出番ながらインパクトの強い脇役のキャラも立っていました。

獄中の表現がリアルなのですが、作者自身が思想犯として収監されていた経験がある方なのだとか。

この作品では、淳が自画像や宗教画を便箋にボールペン1本で描いていますが、獄中詩人や歌人は多いらしいですね。

誰かをここまで真摯に愛し、貫き、生きることが出来るだろうか。

そう問われているような気がしました。

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