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愛読書!『烈火の月/野沢尚』

Rekkanotsuki野沢尚さんの最後の小説です。

遺稿として未完成の作品と、緻密な設定メモが出版されていますが、この作品の2ヵ月後に亡くなられたということですので、完成した作品としては、本当にこれが最後なのだそうです。

舞台は、アクアライン開通により、人口が増加し、麻薬や青少年犯罪、公務員の汚職事件などあらゆる犯罪が集結しつつある千葉県の湾岸の架空都市・愛高市。
非番の夜には海岸でホームレスに扮装し、ホームレス狩りの少年団に先に手を出させた後、相当防衛を盾にボコボコに半殺しにして、確保するという、愛高署“最凶”の刑事・我妻諒介が主人公。
麻薬取引に絡む売人グループの仲間割れとも思われる殺人事件が発生。被害者のメモを頼りに取引場所へ出向き、客と思われる金髪の若い女と対面する。実は、彼女は麻薬取締調査官“マトリの女”こと烏丸瑛子。
互いの組織からはみ出た男と女がコンビとなり、共同捜査を開始し、立ち向かう麻薬密輸業者の裏にあったものは・・・。

野沢さんのこういう作品好きなんだよなぁ。
人間描写の細かさは見事なものがあります。

主人公の我妻、瑛子は共にバツイチ同士。
我妻については、離婚した妻との間に自傷行為に走る娘がおり、自分が妻に与えていた暴力が原因ではないかと傷付き、そのことが更に過激な捜査に結びついていく。

さらに、野沢作品らしいところは、密売人の殺人事件の実行犯で、愛高市の開発を手がける不動産会社の用心棒のキャラクターを掘り下げているところ。
阪神大震災直後、マンションの天井に挟まれ瀕死の状態にいる時に、神戸で修行中だった社長に拾われた男。

一度死んだ男は、何の恐怖も感じなかったが、久し振りに自分を奮い立たせる刑事に出逢い、死に場所を求めるかの如く、我妻と対決に挑んでいく。

二人はまるで合わせ鏡のように、同じ目をしているのが良いですね。

1年周期で異動するエリートの坊ちゃん署長や、彼の就任中に問題が起きないように署内に目を光らせる副署長などの脇キャラクターもしっかり描いているところも、面白いですね。

途中の描写が激しいだけに、事件解決が呆気ない印象もあるのですが、偽善者の面をした巨悪(って、こいつが最後、弱っちい)と、その上でさらに腐敗した権力者たちというのは、今日的な図式なのかもしれません。

実は、この作品、松竹映画で深作欣二監督で企画され、監督が降板した後に、北野武監督・主演で公開された『その男、凶暴につき』の原案とも言うべき作品なのだそうです。
監督がたけしになったことで、映画自体は全く原型を留めないものとなり、野沢氏は深作監督とのコンビで撮影するために何度もシナリオを書き直していて、そこからこの小説は誕生しました。

その後、深作監督は『いつかギラギラする日』という作品を撮影し、『バトルロワイアル』シリーズを撮影中に亡くなられ、企画自体が消滅し、野沢氏もいらっしゃいません。

『烈火の月』が映像化されていたら、どんな作品になっていたのか、想像しながら読んでいくのも面白いかもしれません。

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