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20th東京国際映画祭<第5日目>

さあ、 中日です。
今日は夜からのプログラム2本を鑑賞しました。

○ワルツ(コンペ)
ホテル内の人間模様を全編ワンカットで見せるイタリア映画。
この手法は、韓国映画『マジシャンズ』でも使われていますが、あの作品は登場人物も少なく、小さなコテージ周辺の展開で一幕物の舞台の趣きがありましたが、本作は登場人物も多く、ホテル中を縦横無尽に動き回るということで興味津々でした。

大学を卒業し、そこそこ美人だが、10年間もホテルのメイドしか職のなかった女性が、臨時教員として採用され、退職する最後の一日。同僚の代わりに手紙を送り続けていた男が刑務所から出所し、娘に会いに来るのだが、文通相手が他人だったと知って・・・。
彼女と男の娘ともう一人のメイドに起きた過去の出来事、また別のメイドにプロポーズをする同僚や、ホテルでミーティングを開く、TV業界、サッカー業界の人たちが絡んで来る。

まず、ファーストシーンがホテルの外、出勤風景なのですが、車で登場というのに驚きました。
その後は主人公を追いかけホテル内部へ。すれ違う人に物語をスイッチしたり、エレベーターのドアや迷路のような廊下の曲がり角をカメラが見切ると、回想シーンにフラッシュバックする。
正直『マジシャンズ』を観た時ほどの衝撃はなかったのですが、それでも上手いと思いました。
10テイク撮影して、ベストな1テイクを選んだのだそうです。
スゴイ!!

途中、宴会場で開催されているTV局の会議でサッカー談議を繰り広げているのですが、本筋と関係なく、何となく緩慢だなぁ、と思ったのですが・・・。
実は、そこでは「(観客の)記憶を否定する」というような会話がされていたのですが、映画自体は、現在のストーリーの途中に回想シーンがカットインして来ることで、過去の記憶の効果を活かしていて、会議の内容と対を成すような演出になっていたそうです。
深すぎる・・・。

また、物語のバックボーンには移民問題があって、文通の男性は妻と娘は亡命させたのだけど、自分は失敗してアルゼンチンの刑務所に入っていたという設定だし、もう一人のメイドはイスラム系の移民者です。
この辺の設定は、やや分かりづらかったです。

映画のBGMには、オリジナルのワルツが流れています。
ゆったりとしたテンポで、ちょっぴり憂鬱(メランコリック)な音楽は、人物の周囲をゆっくりと動くカメラの動きに合っています。

ワルツは三拍子。
「3」という数字は安定しているけど、傾けたり、1つでも欠けるとバランスを崩してしまう。
三人のメイドがホテルを去った理由。
隠しテーマとして、そんなのもあったのかもしれませんね。

○ハブと拳骨(コンペ)
今回、邦画唯一のコンペ作品で、宮崎あおいの結婚後初上映作品ということでも話題になっています。
ベトナム戦争時、米軍の拠点となっていた沖縄の歓楽街コザを舞台にした、家族の物語ということで、彼女は主演ではないらしいということですが、期待していました。

主人公は、沖縄の地元ヤクザの用心棒役のギンと、一流の三線奏者でありながら、定職に就かずにプラプラしている遊び人のリョーの兄弟。
リョーは、自分が何をしたいのか分からず、仲良くなった米兵や子分のカズと基地からコーラやビールを持ち出しては、闇ルートで流して小遣い稼ぎをしていた。
いつかは兄と同じ組で働きたいと考えていたが、ギンはそれを頑なに拒んでいる。
実は、沖縄ソバ屋を営む母・カミの本当の子供はリョーだけで、ギンと店を手伝う末娘のアンは血のつながりのない兄妹だった。
しかし、カミは兄妹を同じように叱り、同じように愛していた。
折りしも、沖縄にも本土のヤクザが進出し始め、カミが米軍兵のジープに轢かれて重傷を負ったことから、金策に詰まったリョーが彼等の武器に手を出したことで大騒動に発展していく。

演技経験の乏しい青年をメインに持ってきているので、セリフは学芸会レベルです。
ですが、それ以上に感じるのは、真剣に取り組む姿勢とか情熱とか、熱気が伝わってくる、アツクて、男気溢れる映画だと言うことです。

この時代の沖縄の詳細を知るわけではありませんが、沖縄人がいて、本土の人間がいて、米軍兵がいて・・・。
イイ奴もいれば、悪い奴もいる。
そんな色々な要素がチャンプルーされた文化があって、混沌とした時代、土地ならではのパワーがあったと思います。

プログラミング・ディレクターが「そのパワーとエネルギーだけで選んでしまった」というのは理解できるところではあります。

劇中にリョー演じる尚玄が歌う島唄『てぃんぐさぬ花』。
「花に触れて爪先が染まるように、親の教えを心に染めなさい」という歌。
この作品の大きなテーマは、【母の愛】だと思います。

男臭い作品の中心にある、母親役の石田えりさんと、妹役の宮崎あおいという女優ふたり。
息子を見つめる母親と、擬似家族の中で人々を見守り、癒す少女という役どころは、ヴェネチア映画祭出品の『サッド・ヴァケーション』とも被りつつ、趣きが全く違うのには唸らされました。

石田さんは、『サッド・ヴァケーション』では、【強い母親】というより【強かな女】のイメージでしたが、ここでは戦後の混沌とした時代を生き抜く強さと優しさを持った理想の母親で、感動しました。
少年時代のふたりをゴツンと殴るゲンコツには、愛情が溢れています。

そして、宮崎あおいが演じるのは、明るくて健気で純粋な少女で、重苦しい雰囲気を一変させる、すさまじいパワーを見せてくれます。
兄妹3人で訪れる浜辺で犬と戯れるという家族が一番幸せだった瞬間も、時折見せる悲しげな表情も、彼女の一番上手いところを的確に切り取っていたと思います。
そして、血のつながらない兄のリョーに対する愛情は、基本的には「兄妹の」ものではあるのですが、「男女の」とも取れるような絶妙な匙加減だったと思います。

主人公がヤクザの用心棒ですので、母親の【拳骨】以外にも、暴力シーンが満載になっています。
そこまで、殴らなくても・・・、とにかく、痛そうです。
監督は「【拳骨】の意味は、観ていただいた方がそれぞれに感じていただければ良いので、敢えて言わない」と話していました。
また、別の話題で、尚玄が言った「悲しいけど、生きていく」という一言が印象に残りました。

痛くて、沢山傷付いたけど、学んだところが沢山あって、いま、生きている。
悲しいけれど、ありがとう。
人生を振り返った時、そんな【拳骨】だったと思えたら素敵だな、と思いました。

映画と全く関係ありませんが、「沖縄に降る雪」というセリフが出てきて、MIYAの『沖縄に降る雪』が無性に聴きたくなってしまいまいた。

今年のコンペ部門は、入場料が1,000円と非常にお得な金額となっています。
時間さえ合えば、もっと観たいのですが・・・。

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