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20th東京国際映画祭<第4日目>

残っていた代休を使い切りました。
明日からは夜のプログラムのみの鑑賞となります。
4日目のラインナップは、次のような感じでした。

○砂塵を越えて(アジアの風)
イラク戦争の真っ只中、クルド人兵士が迷子の少年を拾って、街中を彷徨い歩くという実話がベースになっています。
派手は爆発シーンや銃撃戦もなくはないのですが、路駐のトラックを盗んだり、荷台のカレーを食べてしまったり、避難して空っぽの会社や学校、住宅から家財道具を盗んだり(何だか、盗みばっか?)、戦死者の山の中から家族や遺品を捜して、涙したり・・・。
戦争という特異な状況下での、庶民の生活をリアルに再現していて、まるでドキュメンタリーを観ているかのような感覚に陥ります。
テーマとしては、『バベル』と同じく、コミュニケーション不全ということがあります。
イラクではクルド人との長い内戦の歴史があって、同じ土地に住みながらアラブ語とクルド語は通じないし、加えて、湾岸戦争、イラク戦争があって、英語を使うアメリカ軍が駐留するようになりました。
クルド人の監督は、幼い頃に家族でイランに亡命していて、ペルシア語を話せるそうですが、アラブ語は分からないのだとか。
親切心から始まる悲劇と言うのでしょうか。だけど、そこに生きている人たちは、イラク人も、クルド人も、アメリカ兵も全く悪い人たちではない、という描き方をしています。
今までだったら、絶対に避けていただろう作品ですが、観てみたら、素晴らしく良かったです。
「スポーツとか芸術には、どんな状況でも輝きを放つパワーがある。それに貢献したい。」と語る監督の次回作は、戦争中にサッカーをする少年たちが主人公で、現在、制作準備中とのこと。
また、東京でお目にかかりたいものです。

○Breath(アジアの風)
キム・キドク監督が監督廃業宣言(?)後の復帰(?)作品。
でも、何となく東京国際映画祭とキム・キドク監督は、イメージ的に合わないような気がしました。
妻と子供を殺し、死刑判決を受けたチャンジンは、死の恐怖から何度も自殺未遂を図っていた。今回も鋭利な棒で喉をついたが、声を失っただけで一命を取り留める。しかし、既に生への未練はなくなっていた。
音楽家の夫と一人娘に囲まれ何不自由なく暮らす彫刻家のヨン。しかし、夫の浮気を知ってしまい、何かが食い違い始める。死刑囚チャンジンのことをニュースで知り、彼に会うために刑務所へ向かっていた。
幼い頃の死の体験を打ち明け、何度も面会を繰り返す内に、死しか興味のなかったチャンジンと、彼に人の温かみを注ぎ込むヨンの間に、再び生きる活力を思い出し、お互いに単なる欲望以上の感情が芽生え始める。
全く声を発しない男主人公、死刑囚と人妻の恋愛、チャンジンを愛する同部屋の若い囚人、キム・キドク作品らしい禁忌に触れるような設定のオン・パレード。
特に、台湾から参加のチャン・チェンは、当然ながらセリフは一切なく、表情、特に目力だけで圧倒されます。彼でなければ出来なかった役でしょう。
しかし、二人が愛し、求める姿を監視カメラのモニタで終始見つめて、あと少しというところで焦らして、楽しんでいる看守。監督自身にも見えるし、神のようにも、悪魔のようにも見える。
贖罪とか癒しというものであり、でも、死を待つだけの人間に【生】への未練をもう一度与えることはある意味で残酷であり、でも、それだけの罪を犯してしまったのだから、という思いもあり、正・反入り混じって複雑な感情が残りました。
そして、ラストは雪景色の中、雪だるまと雪合戦で幸せそうな家族の図・・・。
全体として、どう解釈して良いのか難解で、やっぱりQ&Aで来日して欲しかった!
今年のフィルメックスはイム・チャンドン監督をフューチャーする(これはこれで楽しみ!)ので、こちらにお鉢が回ってきたのでしょうが・・・。
「配給:SPO」となっていたので、一般公開を期待してみましょう。

○真・女立喰師列伝(日本映画・ある視点)
『イノセンス』等のアニメで知られる押井守総指揮によるオムニバス作品。
無銭飲食のプロたちの姿を描いたシリーズの、女ゴト師編です。
ドキュメンタリー、ウエスタン、ハードボイルド風ラブストーリー、南方系エロ文学風、おニャン子のパロディ、そしてSFの6編です。
『ウルトラセブン』のアンヌ隊員を32年振りにスクリーン復帰させた1本目は、『プロジェクトX』や『その時歴史が・・・』のような拡張高いナレーションで意外性がある。ひし美さん自身の出番は少ないものの、背中の金魚の刺青が美しい。
水野美紀のウエスタン。美貌のガン・ウーマン【早撃ちのミキ】の正体は、飲み比べ、早撃ち勝負、色落とし、あらゆる手を尽くしてタダ酒を呑む【バーボンのミキ】。何もかもが、バカバカしくて笑えます。
藤田陽子さんと和田聡宏君の沖縄の唐黍畑のお菓子泥棒は、直接的な表現がないからこそエロティックで、美しい南の島の映像を楽しませていただきました。
そして、小倉優子がおニャン子クラブのパクリを演じる【クレープのマミ】は、80年代文化をブラックユーモア満載に描き、ユウコリンのまんまですけど、意外に演技も出来るのね、って感じでした。
ツボが同じだったということは、クリエーターの方達が、多分、僕と同世代か、ちょっと上くらいなんですよね。
時間つなぎにチョイスした割には、面白かったです。

○壁を抜ける少年(アジアの風)
詩人であり、舞台演出家でもある監督による、近未来SFという一風変わった台湾映画です。
台湾映画のイメージを見事にぶっ壊してくれましたが、「写実的な作品は、他の監督がやっているので、別の路線で撮りたかった」と仰っていました。
大災害が発生した後の世界。生まれた土地を離れ、新都市に引っ越してきた17歳の少年ティエは、空から落ちてきた不思議な石を拾ってから、壁をすり抜ける能力を身につけていた。
博物館でガイドをしている耳の不自由な少女ノノと知り合い、恋するようになるが、「20年後に会いましょう」という言葉を残し、彼女は姿を消してしまう。
メールで送られてきた写真から、石の力で行くことができるもう一つの世界【他方】にノノがいるという手掛かりを得、行ってみると、今度は目の不自由な少女・ヤーホンと出会い、自分の生きる世界がヤーホンの作ったコンピューター・ゲーム【リアル・シティ】なのだと知る。
ティエは、もう一度ノノに出逢えるのか・・・。
ノノの正体が不明なままだったり、ヤーホンの生きる世界では、ティエの世界で捨てられたもの、失ったものが継続して残っているし、黒と白、黄色と青など補色の色が逆さまになったりしています。(同じものも多いです。)
どちらかが表で、どちらかが裏ということでもないのでしょうが、本当に訳が分からなくて、今日はティーチ・インを聞かずに帰るはずが、聞かない訳にはいかなくなってしまいました。
しかし、今日は監督とプロデューサーのWバースデー企画のため、Q&Aの時間は短く、問題は解決せず、謎は謎として残りました。
ただ、両方の世界を経験することでティエが他人に対して思いやりを持つなど、大人へと成長していきます。少年特有の価値観、世界感を描きたかったのかなぁ、と。
機会があれば、もう一度観てみたいです。

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