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中国映画の全貌2007②『ブエノスアイレス』

中国映画の全貌の2本目は、ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』です。

1997年に渋谷シネマライズで公開だそうですが、当時は渋谷って良く分からない街でした。
(今も知っている場所の、知っている店しか入れないけど。)
これはレンタル・ビデオ(まだDVDではなかった)で、観ました。

ファイ(トニー・レオン)とウェイ(レスリー・チャン)は、香港から地球の裏側アルゼンチンに来てまで、ケンカ別れしては“やり直し”を繰り返すゲイ・カップル。
今回も別れた後、香港に帰るための資金集めのために始めたホテルのドア・ボーイで仕事中のファイの前に、ウェイが偶然に現れたことで、元サヤに戻ってしまう。

何度観ても、冒頭の激しいラブシーンに驚かされてしまうのだけど・・・。

ウォン・カーウァイ作品と言うと、決まった台本がないことで有名で、半袖のアロハを着ていたと思ったら、直後のシーンではコート着ていたりして、今の季節のアルゼンチンは暑いの?寒いの?ってのはあるのですが、現場、現場のリアクションを重視して撮ってしまってから、後で編集でつなげてしまうのはスゴイ才能ですよね。
この作品では、急に香港へ帰国しなければならなくなったレスリーに代わって、台湾からチェン・チェンを呼び出して、別のストーリーを展開させるって、スゴ技を使っています。

カラーからモノクロへ、そして再びカラーへと変化する映像は美しかったです。
クリストファー・ドイルのザラッとした感じのある映像は、登場人物、特にファイを演じるトニー、に寄り添うように切り出されているのが印象的でした。

切ない表情で演技をさせたらトニーはやっぱり上手い。
黒服姿でタバコを吸っているだけで絵になるし、生活観漂う(?)自室でのブリーフ姿はダサくなく、イヤらしさもない。
最初は復縁を拒絶しながら、いつしかウェイが逃げ出さないかと心配になったり、チャンのテープレコーダーにメッセージを録音しようとして泣き出したり、そしてラスト近くでは笑顔があふれている。
前述の通り、演じている時は何処でどう使われるのか分からないシーンもあったはずなのに、一人の人間として気持ちがきちんとつながっていました。

ついさっき見た『覇王別姫』では優柔不断男に振り回され、切なく、傷ついていたレスリーは、今度は逆に、移り気で気が短く、だけど憎めないところのある男として、トニーを振り回していました。

後半、ホテルを辞めて働き始めた中華料理店で登場する、台湾からの旅行者・チャンを演じるチャン・チェンが良い味を出しています。
作品が作品だけに、厭世観があるというか、退廃的な空気が漂う前半から、一気に明るく躍動感が生まれてきます。
休憩時間の路地裏でのサッカーシーンなんかは、その象徴的なシーンですね。

ファイは年下のチャンにプラトニックな愛情を感じる訳ですが、そこからはラブストーリーと言うよりは【自分探し】の物語になっていったような気がします。

南アメリカの最南端の地を踏み、台湾へと帰っていくチャン。
香港の父親との関係を修復しようと試み、一足早くアルゼンチンを離れるファイ。
次々とつるむ相手を変えながら、結局は孤独で、ファイがかけがえのない存在だったのだと気付いていくウェイ。

ラストシーンが台北というのは意外な感じがしましたが、イタズラ心が憎い演出でした。

アルゼンチンは無理でも、久し振りに台北の屋台であったかい豆乳を食べたくなりました。

英語の原題は『Happy Together』。
エンディングのロック・ナンバーのタイトルでもありますが、映画の中で3人の登場人物はtogetherすることなく、バラバラにエンディングを迎えます。
しかし、明るくて、希望に溢れた未来が期待出来るのではないでしょうか。

『2046』とかは正直「?」となりましたが、この作品はウォン・カーウァイ監督作品の中では、非常に好きな作品です。

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