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『不完全なふたり』鑑賞(オススメ映画を紹介します)

Futari日本人監督による全編フランス語によるフランス映画です。

短編オムニバス『パリ、ジュテーム』の中で、諏訪監督が担当した切ない母子の物語をホラーっぽく撮っていたのが良かったので、どうしても観たかったのですよね。

15年間の結婚生活にピリオドを打とうとしている男女が、友人の結婚式のためにパリに滞在する。友人達にとっては理想のカップルであったのに、些細なことでケンカを繰り返し、すれ違っていくふたり。パリでの用事を済ませ、男はリスボンに帰り、女は想い出の地でもあるボルドーに向うことにするが・・・。

映像が斬新でした。男は建築家、女は元カメラマンという設定ということが関係あると思うのですが、固定カメラが、聞き手の目線で話し続ける人を映し続けたり、話し手目線で話を聞いているのか動いている相手を映します。
また、カメラに背を向けている人の表情を鏡やガラスの反射を利用して見せるのも印象的です。

気まずい雰囲気の夫婦ですから、思いっきり愚痴ったかと思えば、急に訪れてくる長い長~い沈黙。
映し出されるのは、暗くて表情が見えない姿だったり、シルエットだけだったりするのですが、何か、見事に監督のペースにハメられたような気がします。

私たちは、大人、特に社会的に認められた地位にある人、は、「完全」な人間だというイメージを抱いてしまう。
でも、本当は完全な人なんていなくて、何処か足りなかったり、アンバランスな「不完全さ」を持って生きているってことなのだと思います。

例えば、作品の中に登場する美術館はフランスの有名な彫刻家のロダンの作品を展示している。ロダンは、詩人のリルケを秘書として雇いながら1年で解雇したり、妻がいながら弟子のカミーユと恋に落ち、その若き愛人はやがて精神を病んでいく・・・。
芸術とか文学を極めた人たちも、そこにある実像は完全ではない、というのも重要なポイントになっているのではないでしょうか。

そして、印象的なセリフが沢山出てきます。

「私たちは何をしてきたのか。私たちは何をしなかったのか。」

何だかスゴク意味の深い言葉ですよね。
「こうなったのが許せない」とか、「どうしてああしてくれなかったのか」みたいなのがあれば、もっと楽になれたのかもしれない。
取り立てて何かがあった訳でもなく、ただ何となくやって来た倦怠感への不安、恐れ、絶望感。
主人公が完全であろうとすれば尚のこと、完全でないことが痛くなってしまうのかもしれません。

少し気障に聞こえますが、「別れから始まる物語もあるし、失って初めて気が付く想いがある」と思います。

駅のホームを列車が走り始めた後、ふたりの物語がどのように続いていくのか、興味をそそられるエンディングでした。

(満足度:★★★☆、オススメ度:★★★)

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