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『あかね空』鑑賞(オススメ映画を紹介します)

Akaneこんなに正統派な中谷美紀さんの演技を観るのは、久し振りな気がします。

深川のおきゃんな町娘・おふみが、豆腐屋を切り盛りする妻になり、長男を溺愛する母となり、未亡人となっても気丈に振舞う女の半生をきっちりと演じます。
「平気、平気」というキーワード的なセリフもあるのですが、それよりも夫婦喧嘩のシーンが印象的でした。さっきまで普通に話していた夫婦が夫の何気ない一言で言い合いになるのがリアルでしたし、「あんたは何も分かっていない」という啖呵が、「よぉっ、江戸っ子だねぇ」って感じで見事でした。
しかし、セリフを良く聞いてみると、非常に現代的な話し言葉なのですよね。全く違和感なく溶け込ませたのは、監督の演出手腕なのかもしれません。

中谷さんも良いのですが、この作品では内野聖陽さんの熱演が光ります。京都から江戸に下った豆腐屋・京やの永吉と賭博場を仕切る傳蔵親分の二役を演じるのですが、なめらかな京言葉の物腰柔らかい商売人と、目付きがキツイ強面の眉毛も落とした剃髪の極道者という両極端な役を、完璧に演じ分けています。

後半に入って傳蔵親分は根っからの悪人ではないことが分かってくるのですが、この二人を一人の人間が演じることには、歌舞伎や舞台ならば良くありますが、意味があると思いました。
息子にとって父親は、口うるさい目障りな存在であり、反面では憧れの対象だと思います。長男の栄太郎が、職人気質の父・永吉とソリが合わないと感じていて、そんな時に目の前に現れた傳蔵が格好良いと思ってしまうのですが、両方とも演じているのは内野さんですから、結局は父親に憧れているのだな、という狙いが見えてきます。
永吉の不器用ながらに精一杯の愛情、おふみのように甘やかすことだけでなく、厳しく、真摯に生きることを教える姿勢に感動しました。

話は変わりますが、映画は石橋蓮司と岩下志麻演じる深川の豆腐屋・相州屋夫婦が、永代橋で息子とはぐれてしまうシーンから始まります。
このシーン、CGで再現された永代橋がものすごくリアルで、感動しました。博物館とかでも似たようなものを見たことがありますが、とにかく、でっかいです。
次のシーンは一気に20年後、京から永吉がやって来るシーンになるのですが、ファーストシーンがどういう意味を持つのか、興味を引かせます。この辺りの見せ方も上手いです。
そして、永吉とおふみの祝言の日に、相州屋の主人が亡くなります。後に、永吉・おふみ夫妻は、相州屋の跡地を借りて、大通りで店を出すことになるのですが、腕利きの職人から職人へのバトンタッチという意味を含めているようでした。

そうそう、夫婦がお参りにいく豊岡八幡宮ですが、ロケ地は文京区の根津神社。
昔、近所に住んでいたので良く行きましたが、時代劇の撮影もしょっちゅうやっていて、懐かしく思いました。
自分も江戸文化の残る下町育ちということもありますが、こういう時代劇が心地よいと思うのは、自分もやはり日本人なのだなと感慨深いものがあります。
極道も、嫌がらせする老舗の店主も、基本的に性善説なキャラ設定に安心して観ることが出来ます。

(満足度:★★★★、オススメ度:★★★☆)

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