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愛読書!「龍時 03-04」

Ryuji0304脚本家であり、小説家でもある野沢尚氏のサッカー小説です。彼の作品では「眠れる森」、「破線のマリス」、「砦なき者」、「深紅」などのドラマや小説が好きなのですが、どちらかと言うとミステリータッチの作品が多いので、少しジャンルの違う作品なのかもしれません。

主人公の志野リュージは、17歳で単身スペインに渡り、サッカー後進国のアジア人ということで差別を受けるなどツライ経験もするのですが、類い稀な才能と負けん気の強さでチャンスをつかみ、2年目にはレンタル移籍先で後半に投入されるスーパーサブとして大活躍していきます。海外挑戦となる1巻では「日本人のアイデンティティ」、頭角を現し始めた2巻では「リーガ・エスパーニャの熱さ」がテーマでしたが、今巻では2004年のアテネ五輪を舞台に「監督と選手の関係」が描かれています。

19歳になったリュージは五輪代表に呼ばれるのですが、リーガ・エスパーニャで見せる「閃き」によるプレイを封印させ、決まり事を重視するプレイを求めているような代表監督との確執が、次第に「この監督のために勝ちたい」という気持ちに変化していく様子が、練習や試合のシーンだけでなく、フリーライターであるリュージの父親の東京での取材により明らかになっていきます。

執筆時は五輪予選の結果が出る前だったとのことで、出場国や選手、試合の結果は現実とは異なるのですが、主人公と一部を除けば、本物の選手たちが登場します。試合のシーンでは、選手の動き、ボールの動きが見えてくるように表現され、加えてその一瞬一瞬の判断の過程や心情も描かれ、本物の試合を見ているような錯覚に陥ります。監修にはサッカー解説の中西哲生氏が参加しているのですが、巻末の「解説」によれば、シリーズ開始当初は原稿が真っ赤になるほど指摘したが、3巻目ともなると直すところはほとんどなかったと言います。サッカー経験の全くない小説家ということが信じられない表現力です。現役Jリーガーの愛読者も多く、特に試合シーンは絶賛されていると聞いています。

シリーズ4巻のテーマは「ケガとリハビリ」の予定と伝えられ、リュージは苦難を乗り越え、A代表に呼ばれ、ワールドカップのピッチに立っているのだろうな、と信じていました。そのための伏線と思われる部分も多く描かれています。

しかし、僕たちに届けられたのは、新作ではなく、作者急逝の報せでした。

僕たちはもうリュージの活躍を見ることは出来ません。A代表でガムシャラに走りまわる若武者も、大人になってそれなりのズルさも身につけた円熟したプレイも、恋人(スペイン娘と交際中)と結婚し、子を持ち、いつか引退し、後継者を育てていく姿。

ずっと、ずっと、応援したかったのに・・・。

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